🎓What I thought🎓
ChatGPTなど生成AIをめぐる動き
近ごろ、生成AIの話題ばかりである。
まず火付け役のChatGPTだ。このAIの話題を見ない日はない。会社のSlackにエンジニアか否かを問わずChatGPTの記事や自分で使ってみたことを投稿している。Microsoftが対話型の検索システムを発表し、Googleも対抗でBardを発表するなど、Big Techも素早い動きを見せている。
Googleの検索システムにライバルが現れる瞬間が来るとは夢にも思っていなかった。FacebookがInstagramを買収したような、自身の競合が発生し得ないような仕組みが整えられていたからだ1。しかしちゃんとライバルは現れたし、ライバルが現れたその瞬間から競争が発生するのは資本主義だなと思う。
使ってみての所感
僕自身もChatGPTや生成AIを使い始めている。僕は英語を読む時にGoogle翻訳やDeepLではなくChatGPTを使い始めた。
普通に自分で英語を読んでいて、よくわからない意味の文章があったりする。それを「もっとclearにして」とか「もっと簡単な表現にして」とか伝えてみる。そうすると、意味は(たぶん)そこまで損なわれずにわかりやすい言い方をしてくれる。
Google翻訳やDeepLは結局のところ書いてある英文が難しいと出てくる日本語文も難しい。英英辞典のように、難しい文章と同じ意味の平易な英文を出力してくれるほうが意味を把握するのには使いやすいこともある。もちろん、日本語にすることもできる。
それから知らない言い回しがあると「この表現はどういう意味なの?」とか聞くこともできる。「Aという言い方とBという言い方はどう違うの?」みたいなニュアンスまで解説してくれたりする。完璧なのかはわからないが、ひとつの英文を深く理解するのにもよく使えそうだ。
それから、Notion AIにWeb clipした記事の要約をさせてみたりもしている。英語の長い記事とかもどういう内容なのか要約してもらうととっつきやすいし、タイトルは気になるけど何が書いてあるかわからない、みたいな記事に要約文を添えてもらうことでこれは読む/読まなくていいやという判断軸を増やすことができた。
他にも色々使い勝手はあると思うが、僕はこんな感じで使っている。
今のところ自分や他の人間が作った入力があって、それをもとにそれを改善・改良するのがこの人は得意だなと思っている。質問に答えさせたりしてみたけど、特に事実誤認は多いしあまり得意じゃないように見える。
結局カネなのか?
一方で、世間の言うほどAI技術という手段にはあまり関心を寄せられない自分もいる。
いまAIにかかる資金は莫大だ。ChatGPTの応答にかかるコストは10セント(約13円)未満らしいが、ユーザー数が多いので1回が5円でも100万回やれば500万円かかる。調べたところ、OpenAIは応答に1日10万ドル(約1,300万円)ほどコストをかけているという試算もある(どれほど妥当なものかは検証していない)。
これだけではない。学習のコスト、学習に利用したデータを保存するコスト、研究開発をする人件費などを考慮すればさらにコストは嵩むはずだ。
毎日ユーザーのために1,300万円払い、その上学習を進めるためにそれとは別に計算資源にコストを払い、ストレージにコストを払い、人件費を払う。それがOpenAIという非営利団体の現状なのだ。
僕はGoogleのライバルになるようなテクノロジーはスタートアップから出てくるものだと思っていた。イノベーションのジレンマによれば、大企業は成熟しているがゆえに新興企業に抵抗できない。Googleという十分に成熟した(少なくともスタートアップで働いている自分からはそう見える)大企業のビジネスに抵抗できるのも、新興企業、スタートアップのはずだしそうあるべきだと思っていた。
しかし現実は非情である。MicrosoftがOpenAIに多額の出資をした。これによって結局競合はOpenAIではなくMicrosoftになった。
特に自然言語処理AIの巨大化は留まるところを知らない。もう資金力のない新興企業から同じ路線でイノベーションを生み出すことは難しいだろう。それほど巨大になってしまった。
結局カネがなければBig Techと戦えないのか。そしてカネをくれるのもまたBig Techなのかと思うと、いつまでも彼らの天下が続くような気さえしてくる。
📕 What I Read📕
資本主義を問う、武器としての資本論
さて、そんなカネが全てなのかという暗澹たる気持ちを持った上で『武器としての資本論』という本を紹介したい。
なぜ「格差社会」が生まれるのか。
なぜ自己啓発書を何冊読んでも救われないのか。
資本主義を内面化した人生から脱却するための思考法がわかる。
ベストセラー『永続敗戦論』『国体論』著者によるまったく新しい「資本論」入門!
経済危機が起こるたびに「マルクスの『資本論』を読もう!」という掛け声が上がる。でもどうやって読んだらいいのか。「資本論」の入門書は数多く刊行されている。しかし「資本論」を正確に理解することと、「資本論」を現代に生かすこととは同じなのか?
本書では「資本論」の中でも今日の資本制社会を考える上で最重要の概念に着目し、それが今生きていることをどれほど鮮やかに解明するかを見ていく。
資本主義とはなんなのか、いまあなたの目の前で起きている現象——恐慌、長時間労働の常態化など——はなぜ発生するのかをマルクスの資本論をもとに語る本である。
正直、「新自由主義に意味を見出しすぎでは」とも思った。しかし、全体的には興味深い記述が多い。マルクスの『資本論』は戦後の日本経済や現代社会というものは踏まえずに書かれている2。その点、この本は現代の我々に刺さる例や補足がなされているのでとても掴みやすい。
特に資本主義がなぜ成立したか、すなわち「なぜ労働者が労働せざるを得なくなったのか」については一読の価値があると思う。「本源的蓄積」がイギリスでも日本でもなされた結果、資本家と労働者が発生したというのは今までなかった視点だった。そう、僕もまたとても資本主義を内面化しているのだ。
今も我々は、マルクスの言う枠組みをそこまで逸脱していない気がするし、ともすると僕らはこの社会のことを勘違いしたまま生き続けているのではないかと思う。
カネさえあればユーザーも保護しなくていい
僕は去年からElon Muskが何をしていてもムカつく病気になっているのだが3、言及すると負けな気がして今まで言及しなかった。
しかしまぁ、話題に事欠かない人である。そして、Elon Muskはこのニュースレターのテーマに相応しい。カネを持ってりゃ偉い、カネさえ持っていれば本当になんでもできる、その象徴のような存在だ。
BBCがそんなElonが所有するTwitterの現状を伝えていた。記事によれば、児童ポルノが増え、レイプ被害者への攻撃が増えているという。
同じ記事のインタビューに出てくるレイオフされた人のひとりに“nudge”という機能を作った人がいた。これはリプライをする前に攻撃的な内容がツイートにあれば、送信を思いとどまらせるようアラートを出す機能だ。“nudge”機能は効果を挙げており、60%が実際に返信内容を編集または削除をした。さらに、一度“nudge”された人は将来的にも攻撃的なリプライをしなくなる傾向にもあったという。
しかし、この機能はElon Muskの買収後の体制のもとで廃止された。
また児童ポルノの対策チームも解散となっている。経営陣からコンタクトがあったわけでもなく、専門的な知見が蓄積されたチームが解散となったらば、何が起こるかは言うまでもない。
こんな状況の中でTwitterはさらにレイオフも進めているとの報道も2/26に出ている。
さて、このあとどうなるのか知らないし興味もない。僕は今はこの話題よりTikTokが政府にBANされている話のほうが興味がある。
そう簡単にTwitterというサービスは終了しないだろうけれど、むしろ売り上げをあげて回復までするかもしれないけど、もう僕が居たい場所ではない。
Twitter insiders: We can't protect users from trolling under Musk - BBC News
今日はひたすらカネの話をしました。
僕はあまりお金に興味がありません。お金を貯めることにも興味がなく、お金を稼ぐことにも興味がありません。本当に心の底からどうでもいいと思っています。
資本論について学べば学ぶほど、人々がお金に魅了されるメカニズムが詳細に理解できます。僕はその「魅力」の部分はあまり肌では感じられませんでした。しかし不思議なもので、僕はこのメカニズムのほうは学ぶ前から既に知っていたように感じました。
確かにお金には無限の可能性があるとも言えるのかもしれません。しかし真剣に考えれば考えるほど、そんなものはないのです。無限の可能性は人間にあるのであってお金にあるのではありません。その理由は至極単純です。お金は使わない限り何も成しませんし、お金を使えるのは人間だけだからです。
なんでただそれだけのことを、人は見失うんだろう?なんでわからなくなるんだろう?それが僕にはずっと不思議だったのです。
もちろん言語化できていなかったので、マルクスに教わった部分も多分にあるでしょう。しかし直感的に、この人々が魅せられている「お金の魔力」には何か裏があると思い続けていました。その裏の言語化の一つの形が『資本論』なのかなといま思っています。
今日はアンチ資本主義みたいな話をいっぱいしましたが、僕は共産主義者ではありません。むしろ資本主義大好きだし、スタートアップとかいう資本主義からしか生まれないカルチャー最高だなって思っています。この部分はどれだけ強調しても強調しすぎることはないです。
ただ僕は、「結局世の中カネなのか?」と聞かれた時に、「違う、そうじゃない」と断言できる社会にしたいと思っているだけです。
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Googleのこうした対策はわかりづらい形だったので、Facebookほど強くは批判されなかったのだと思う。
ドイツ生まれの人がイギリスにいる間に書いた150年前の本だから当然だけれども。
病状が悪化した上に、Elon Muskが自身のツイートを全ユーザーに表示されやすくするように変更したことに嫌気がさしてもうTwitterにほぼアクセスしなくなった。