2025年、Xのタイムラインとかnoteでの記事とかでよく目にするプロダクト名はCursorやObsidianなどだ。
AIコーディングツール「Cursor」で記事を書くようにしたら、“考える余裕”ができた | ギズモード・ジャパン
Cursorを使った文章執筆は、AIファーストな環境整備から始まる - 本しゃぶり
アーリーアダプターがAIライティングとそのワークフローの構築にこぞって取り組んでいる時代になった。
さて、筆者も例外ではない。このトレンドに乗ろうといくつか記事を読んでみた。
結論はこうだった。
「めんどくさ」
ということで、この記事はAIライティングに必要な知識は得られない。ぜひトレンドを追う人はトレンドを追う記事に行っていただきたい。
この記事では、逆張りもいいところのEmacsで自分のドキュメント群を構築する話をしていく。
技術的な話は別にしない。それこそ、Claudeにでも聞けばいい。僕も最近はEmacsの設定方法はだいたいClaudeに聞いている。
僕がこれからする話は、この時代に「なにを考えたいのか」、「なにを深めるべきなのか」から考えた結果出来上がったワークフローの話だ。
そしてそれは確かに時代のトレンドにはあっていない。しかし、本来の目的を見失わないための話だと、自分では信じている。
あるべき姿とありたい姿の間
3年ほど忘れていた感覚
この3年ほど、ほとんどEmacsとかVimとかに触れなかった。Vimはたまに矩形入力とかマクロとかを使いたくて起動することはあったが、Emacsは本当に起動していなかった。
正直その理由も別に面白いものではない。掃いて捨てるほどよくある話だ。簡単に言えば、仕事でコーディングとかをしていると自分好みのワークフローで120点の生産性を叩き出すよりも、そこそこ汎用的で80点の生産性をメンテナンスコストかけずに維持し続ける方が良いと思ったのだ。
チームメンバーとしてコードを書きながら、採用面接に出席したり、チームメンバーと1on1をしたり、NotionとGitHubとなど様々なツールをブラウザで開きという生活の中で .emacs.d/init.el とかを管理したくなくなったのである。
特に直近1年は事業にコミットしたいと思っていたので、ハッカー気質を出すようなメンテルにならなかった。話している相手もエンジニアとは限らないし、どうやって事業価値を出すのかを考えているとEmacsがどうとかVimがどうとかは正直どうでもよかった。
自分のありたい姿
このところ、諸事情で暇なので「そもそも」をよく考える。
そもそも、自分はなぜソフトウェア開発をしているのか
そもそも、自分はなぜ仕事をしているのか
そもそも、自分はなにがしたくて生きているのか
そしてそもそも、自分はどうありたいと思っていたのか
2020年以前の筆者は間違いなく道具にこだわる人だった。自分のワークフローを自分で定義し、自分の選定したツールで実現した。それが快感だったし、衝動の捌け口だったといっても過言ではない。
しかし気がつけば、先述の通りそのこだわりは「結果を出すこと」へのこだわりに負けた(念のため書くけど、結果を出すことにこだわることもめちゃくちゃ正しいと思う)。
しかし、道具へのこだわりは捨てたいものだったかというと疑問符が残る。道具へのこだわり自体は、自分がありたい姿に繋がっていると思う。
ハッカーへの憧れ
UNIX哲学への回帰
そもそも、自分の執筆者としての環境はどうあってほしいのか。
道具へのこだわりと結果を出す塩梅について考えた時に、自分の中で思い出したのはUNIX哲学だった。
プログラムはひとつのことを、うまくやるべきだ。
GTDの道具として、Todoistをとても気に入っている。自分の行動を管理するアプリとして柔軟性が高い。PCだけでなくスマホでも便利に使えることなどで実利もとる。
あらゆるコミュニケーションをメールでやっている自分もいる。LINEやDiscordよりも、公的なやりとりはメールの方が管理がしやすい。どうやって管理するのかが自分の中で完全に固まっていて、そこに隙も疑いもなにもない。
ということで、ひとつの目的に対してひとつ以上のワークフローを割り当て、そのワークフローをひとつのソフトウェアで実践している。
ハッカーへの回帰
回帰とは書いたけど、結局本当は別に僕はどこかから行って戻ってきたわけではない。もとからハッカー気質だったのだ。
ひとつのことをうまくやる。かつて僕がVimやEmacsを設定していたのもそのためだった。コードをうまく書くために環境にこだわり、道具にこだわっていた。
であれば、文書を書くために自分がどうこだわるべきか?
その答えは簡単だった。書いてなにを実現するのかという目的にこだわるべきであり、その目的を実現するためのワークフローにこだわるべきだ。
目的に整合させる環境
ということで。
だらだら書いたけど、要するに僕は執筆環境としてEmacsの環境整備をすることにした。
そしてそこには、AIライティング環境を整備しない、あえて採用しない理由もある。
目的
自分の思考を最大限に「深める」環境を作ることを目的にした。
深める、という言葉を選んでいるのがキモだ。
記事にするためでもなければ知識として残しておくことを目的にしていない。僕は僕の考えをより深めるために今回の環境整備をした。
そしてそれを支えるために、以下の2つの要素が重要だと考えた。
執筆中のストレスを最小限にしたい
いつでも執筆できることを目指さない
結果として捨てたもの
AIライティング
この目的に沿って考えると、まずAIライティングを捨てた。
念のため言っておくが、別にAIに文書を書かせたりはしている。しかし、自分の考えを深めるためのノートはAIには書かせず、自分で書いている。
これは正直信仰だが、仮にAIとの会話で思いついたことだったとしても、自分の言葉で書き直さなければ理解は深まらない。というより、自分で書けなければ自分が理解したことにならない。
よって、理解の試金石にするために、自分で書き直している。これも目的が情報を蓄積することや記事を執筆することを目的にせず、あくまでも自分の思考を深めるためだからだ。
汎用エディタ
1により、執筆中のストレスに焦点を当てた。
これはVSCodeやCusorといった汎用なエディタを選ばず、カスタマイズ性が高いエディタを選ぶ理由となった。なぜならば、考えを深めるためには複数のデータソースに1秒以内で辿り着けることが重要だと考えたからだ。
スマホなど複数端末対応
2は、スマホなどで操作できることを諦めるという意味だ。
なぜならば、自分の思考スタイルを見ている限り、出先などで考えが深まることはあまりない。だから、休日の午前中に自宅でエディタを開いて小一時間、自分の思索を深めていくことにした。
結果としてこれが Emacs という選択肢を浮上させた。
実際のワークフロー
正直ここから先はあまり書くモチベーションがない。なぜならば、2025年にEmacsの話を真面目に書いて誰が読みたいんだよと思っているからである。
ということでざっくりと書く。
まず、メソッドとしてはZettelkastenを使っている。GTDのinboxにメモはなんでも書いていて、TodoistのプロジェクトにSlip-boxというプロジェクトがある。
inboxからこのプロジェクトに移すときにメモとして清書をある程度しておき、Emacsに移したらDoneにする。
(文献メモだけは文献管理ソフトに加えたいなと思っているがまだそのあたりうまくできていない)
次に、土曜がきたらEmacsを立ち上げて、Todoistのメモを見ながら過去のノートを見直す。過去のノートのタイトルだけを見直しながら、C-c C-l
でバックログを眺めつつ C-c C-o
で移動しまくって新しく作ったノートの内容をどこに作るか、どこにリンクをはるかを作っていく。
プラグインとしては org-roam を使っている。これについてあれこれ説明はしないし、ていうかChatGPTに聞いて欲しい。
あとファイルはiCloud Driveで管理しているので、読むだけならiOSからも読める。というより読んでいる。もっというと、ChatGPTとかにorg-modeで書かせてなにか投入しておく、とかはやっている。
終わりに
ということで。
目的に沿った執筆環境を作った結果、なぜかEmacsを週に1回開くことになった。
とはいえやっぱり、自分がすべてをコントロールできる感覚はやはり素晴らしい。VSCodeに大きな不満はないが、自分がすべてをコントロールできる感覚はあまりない(僕があまりTypeScriptを書かないせいかもしれない)。
この執筆環境はせっかく作ったし、できればEmacsを使う頻度をあげたいなと思っている。仕事でTODO管理をするのにも本当は使えると思う。
次の職場ではEmacsを自分に貸与されたマシンにインストールをしたいなとか思っているこの頃。